大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 昭和25年(う)708号 判決 1951年2月08日

控訴人 被告人 高橋文雄

弁護人 加藤英治

検察官 小松不二雄関与

主文

原判決を破棄する

本件を札幌地方裁判所に差し戻す

理由

弁護人の控訴趣意は別紙のとおりである

職権により原判決を調査すると原判示事実は「被告人は何等これという原因もないのに一時の出来心から自宅に放火しようと決意し肩書所在の居宅に接続する物置内にある鉋屑及び床の間づき六畳の間の押入内の布団綿に夫々マツチ(証第一号)で点火し因てその父高橋利雄他二名が現に住居として使用している木造亞鉛板葺家屋一棟三戸(三十五坪)を半焼するにいたらしめたのであるが被告人は本件犯行当時心神耗弱の状況にあつたものである」と判示されていて本件犯罪の日時の記載のないことが明白である有罪判決を言渡す場合における罪となるべき事実としての犯罪の日時記載は公訴時効、法令適用の当否等に重大なる関係を有するものであるから判決に罪となるべき具体的事実を認定するに当つては必ず此の関係を知り得る程度において犯罪行為の行われた日時を判示し場所方法と相俟ちて犯罪事実を特定しなければならない従って本件犯罪の日時の全く欠除した原判決にはこれに理由を附さない違法があつて控訴趣意に対する判断をなすまでもなく破棄を免れないよつて控訴趣意に対する判断を省略し刑事訴訟法第三百九十七条により原判決を破棄すべく尚少年法改正法が昭和二十六年一月一日より施行され少年法の適用を受くる者の年令が二十年まで延長された結果現在においては被告人は少年法の適用を受け得る状況に立至り或は被告人を医療を要する少年として家庭裁判所に移送する場合も考へられ之等の点について更に事実の審理を必要とし当裁判所において直ちに判決をなすに適しないものと認め同法第四百条本文により本件を札幌地方裁判所に差し戻すこととし主文のとおり判決する

(裁判長判事 黒田俊一 判事 猪股薫 判事 鈴木進)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例